女であるということ

悪い女ほど、清楚な服が、よく似合う。

出不精が浅草に行った話

先日、中学生ぶりに浅草に行ってきた。

最近の浅草はインスタ映えの食べ歩きグルメや、可愛い着物でフォトジェニックな写真を撮ることが出来る街になっている。かと言って古きものが消えつつあるのかと言えば、それもまた違う。食べ歩きの品だって団子に餡子やフルーツなんかが乗っているものがあったり、ハート型カステラと苺が交互に恋みくじ付きの串に刺さっていたりと、古きと新しきのいいとこ取りで、それ目当てで浅草に降り立つ人も増えている。

それらの写真をSNSで見ながら行こうかと思ったりしていたが、なんせ私は自他共に認める出不精であるためなかなか叶わずにいた。

そんな私がなぜ浅草に出向いたのか。しかも一人ぼっちで。

その理由は、浅草演芸ホールで行われている講談師神田伯山の真打昇進襲名披露興行を見に行きたかったからだ。

2017年11月、笑点の演芸コーナーで二ツ目だった当時神田松之丞の講談をたまたま見て、それから興味を持つようになった。今思うとこのたまたまでラジオをクラウドで全部聞いたり、結局上京して初めての寄席に行ったのだからメディアの力は偉大なのだと実感する。

開場16時40分の夜席の公演だったので、10時半前に夜席の整理券を求めて作られた列に並んだ。番号は250番ほど。席数は328、立ち見含めて450なので半分以上捌けていた。

とりあえず座れることに安堵し、そしてどうやって暇を潰そうか考えた。時計を確認するとまだ11時前で家に帰るのも中途半端だったので、前述したインスタ映えの食べ歩きをすることにした。

 

インスタで「浅草グルメ」と検索するといくつか興味の惹かれるものがあった。

まずは抹茶クレープ専門店。これは整理券がないと食べられない代物。また整理券かと多少うんざりとしたため息をつきながら、お店の住所をマップアプリに打ち込みいざ向かう。

向かっている最中の街並みは、とても安心感のある下町の風情を醸し出していた。年齢層高めの居住地のなんとも言えないあのほっこりとする空気はどうやって生まれるのだろう。

そしてマップ上に記載されているお寺が多すぎて、ある道を通る時は両側お寺だらけだった。エレベーターや自動ドアのあるお寺。それも二重の自動ドア。時代とともにお寺も便利な建物になっていくんだな。

そんなことを思いながら到着したところでトラブルが発生。

公式に載っている住所が間違えていて、全然関係の無い高校の裏の道に到着してしまったのだ。改めてマップを開き今度は店名を検索すると、なんと来た道とは逆方向。歩いた20分と体力を返して欲しい。

それからまた30分近く歩き、ようやく目的地に到着した。またお店自体も狭い路地にあり見つけるのにも時間を要したが無事に整理券を獲得出来た。自分の番号まで時間があるので別の食べ歩き店へ向かう。無事到着し、1時間近く歩いたからチャラだと言わんばかりに大きさのある台湾唐揚げを食した。

 

それから浅草寺に向かった。台湾唐揚げのお店が仲見世の横道にあったので、雷門まで歩く気力が無くそのままお寺の方に向かった。中学ぶりの浅草寺は雷門のイメージが強かったが、途中の宝蔵門(仁王門)と呼ばれる門も大きく立派だった。門をくぐって参拝しようとしてふと神社と参拝方法が違うことを思い出し、ネットで調べてきちんと参拝出来た。現代っ子の私が言うのもなんだが便利な世の中ね。

 

それからクレープの整理券の時間が来たので向かう。その専門店のクレープ生地には抹茶が練り込んであり、白玉ときな粉が入っているものやクリームブリュレなど全部で4種類の中から選ぶことが出来た。出来上がりのクレープを写真に撮り、まあまあ強い風に吹かれながら3、4口食べたところで私の口が甘いものを拒否し始めた。たっぷり甘いわけではなくむしろ普通より甘さが控えめだったと思うが、上部がクリームたっぷりだということもあり、食べ終わる頃には軽い吐き気を覚えた。1時間前に食べた台湾唐揚げが恋しい。

 

あとはカフェで神田伯山ティービーチャンネルを見たりと適当に時間を潰していざ浅草演芸ホールへ。

 


【密着#01】松之丞が六代目神田伯山になった日【毎日更新】【神田伯山ティービィー】

 

 

整理券の列整理を始めた頃にはもう少しで札止めというところだったと思う。

初めての寄席。あがり症の私は初めての場所で終始緊張するんじゃないかと思っていたが、蓋を開けてみれば緊張したのは入場だけであとはマイペースにゆったりしていた。過去の趣味でいろいろな現場(会場)に行っていたのが経験になっていたらしい。

 

そんなこんなで始まり、生の宮治さんと小痴楽さんを見れて満足。宮治さんに関しては高校時代に芸術鑑賞会的な行事で一度生で古典落語を聞いている。何をやったとか細かいところは覚えていないのだが、あの頃の記憶に残ってるのは落語って面白いってことだ。面白いって偉大だ。

時間としては長くなかったけれど、トップを走る先生方師匠方の高座を見聞き出来てなんだか言葉に出来ないくらい良い経験をさせてもらったとでもいうんだろうか、そういう気持ちになった。本来寄席というのはそういう感情の湧き立つところではないのかもしれないが、初めての寄席、そして真打昇進襲名披露興行ということで勘弁してほしい。

そして8時を過ぎた頃、大本命の神田伯山先生の高座。ライブ感のあるまくらで笑わせてもらった。今日は何をやるのかと期待が高まる。

この日は赤穂義士伝から赤垣源蔵・徳利の別れ。赤穂義士伝のテーマは別れという前振りを分かりつつも、兄弟の永遠の別れに涙腺が緩んでしまった。

 

帰り道、凄かった楽しかった行って良かったという気持ちでカサカサだった心が潤った感じがした。素晴らしい伝統芸能を周りに布教したいなあ、と初心者が思う夜。余暇は寄席に行こうかな。